ローディーのお仕事 応用編 ドラムス

ドラムスのケアやローディーとしてのポイント

ドラムのケア及びドラマーのケアには、こうするのがベストというのはないと思います。セットのパッケージから、ドラムヘッド交換のタイミング、チューニングの仕方からプレイまでドラマーによって千差万別です。

ドラムに限って言える事ではありませんが、ドラマーが何を思ってそのキットを使用し、また楽曲に対してどのようにアプローチしているかを考慮しないのでは良いケアが出来るとは思えません。担当のミュージシャンとコミュニケーションを取り、相手が大切にしている事や気をつけている事をちゃんと守ってケアしましょう。さて、ドラマーと協力してベストなセッティング、チューニングが出来たからそれで大丈夫かといえばそうではありません。ステージ上で鳴っているドラムがマイクを通して、客席に良い音で届かなければそれは自己満足に終わります。PA エンジニアが何を求めてマイクを選別しているか、どのような角度・距離でマイキングしているかにも配慮すべきです。キックとトップ 2本で完結する方もいれば、各マイクの特徴を生かして絶妙なミックスをされる方もいます。レコーディングに於いてはアンビエントを多用して録る方もいます。タムに関しては定位付けの為だけにマイクを立てる人もいます。楽曲に対してのミュージシャンのアプローチ、エンジニアの求めているものを理解した上で双方のコミュニケーションを潤滑にする為にローディーの存在があるべきではないでしょうか。

ドラムスにおける注意点や心遣い

他の楽器に比べ「叩いて音を出す」という性格上、頑丈に作られていますが、楽器である以上繊細な物である事は言うまでもありません。特にシェル(胴)は見ての通り縦方向(叩く方向)からの荷重はある程度考えて作られていますが、横方向からの荷重には弱く出来ています。木製のシェルに関してだと、以前は和太鼓に代表される「単板」と言われる原木をくり抜いて作られるシェルもありましたが、近年は何枚かの平板を重ね合わせて作られる「合板」が主流になっています。合板の場合、四角い「板」を丸く曲げて作られている為、横方向からの荷重がかかるとシェルが曲がったり、歪んだり、最悪のケースとしては割れてしまう事も考えられます。もちろん金属製のシェルにも同じ事が言えます。

又、先に述べた様に「叩いて音を出す」と言う性格上、シェルに付いている金属製の「ラグ」や「ブラケット」を留めているネジが振動で弛んでしまうことがあります。セッティングやチューニングが終わった後にヘッドを外して締めなおすのは、時間的にも手間的にも好ましくありません。ヘッドを張り替える時にマメに増し締めしておく事が望まれます。

スタンド類に関して。一見丈夫に出来ている為、稀に粗雑な扱いをする人を見かけますが、扱い方次第では簡単に壊れてしまう物も少なくありません。パーツの破損がセッティング時やバラシ時に判ったのであれば対処も容易ですが、もし本番を含めた演奏中に壊れてしまった場合、プレイヤーにとって致命的とも言えるトラブルとなってしまう事も考えられます。実際にあった例ですが、スネアスタンドの高さを変えるネジが壊れてしまって演奏中に突然スネアの高さが一番低くなってしまい、演奏を中断したということがありました。もちろん使って行く中で経年変化による故障もありますが、木製の物だけではなく、金属製のパーツに至るまで注意が必要です。又、ケースにしまう場合にも注意が必要です。特にパーツケースにスタンド類をしまう時、シンバルスタンドの足等、比較的頑丈で重量のある物を先に入れ、ハイハットスタンドやキックペダル等はなるべく重量のかからない上に入れておくのが望ましいです。特にハイハットスタンドのロッド(芯棒)は他と比べると細く出来ている為、荷重が掛かると曲がってしまう事も考えられます。曲がってしまったロッドは正確なハイハットワークが出来なくなる為、細心の注意が必要です。

合わせて重要なのがミュージシャンが座る通称「Dr イス」。イスの高さが少しでも変わってしまうと演奏に影響が出てしまう事も考えられます。「ドラマー」では無い人が座っても感じないほんの少しの高さの違いでも、プレイをしている側からすると「しっくりこない」と感じる事が少なくありません。全てに言える事ではありますが、ミュージシャンの立場に立って、慎重なセッティングを心掛けて欲しいと思います。

これはやってはいけないドラムス編

ヘッド交換の時の注意点。

最近の物は製造段階でコンピュータ制御の為、個体差が無くなって来たのに加え、新品の物も使い始めからそれとは感じさせない音を出す事が出来ていたりします。ただ比較的新品の場合、シェルのエッジ(ヘッドとあたる部分)が厳密に言うとデコボコとしている物が見受けられます。その様な場合、エッジがヘッドと密着出来ていない為、プレイヤーが叩いた振動がうまく伝わらない事が考えられます。そこでヘッド交換時等、ヘッドを外した時に目の細かいサンドペーパーでエッジを軽く磨いてみると細かいデコボコが均一化され、ヘッドとエッジの密着が増し、音の抜けがよくなる事があります。ただこの作業は最も注意を用する作業で、削り過ぎると余計に悪化する事もあります。なるべく目の細かいサンドペーパーを用意する事も必要ですが、細心の注意を払って作業する事が望まれます。新しいヘッドに交換したのちヘッドを馴染ませる為、体重を掛けて上から押したり、ヘッドの上から足やひざで乗ったりするのを見かけた事がありますが、個人的には賛成出来ません。先に述べた様に、シェルは何枚かの平板を重ね合わせて作られる合板の為、必要以上の力が加わるとシェルが歪んでしまう事が考えられます。又、ヘッドにとってもあまり良い事とは言えません。例えば正座した後立ち上がると、ズボンのひざの部分だけがポコッと出ている時があると思います。それと同様にヘッドを手や足で「伸ばす」という名目でテンションを掛けた場合、テンションが掛かった所だけがズボンのひざの様に伸びてしまい(歪んでしまい)、均一にはならないと思われます。無理に力をかけてシェルやヘッドのテンションを変えてしまう事は必ずしも良い作業とは言えないのでは無いかと考えます。

知っておきたいドラムスの etc

一緒に演奏されているベースの音色が変われば、バスドラの音が変わる事を認識してますか? アンサンブルを意識してチューニングすると楽しいです。

年配のドラマーに教えて頂いた事ですが・・・ファンク系の 16ビートの得意な方で、バスドラに関してその方のチューニングは打面側を「え?こんなに?」と思われるくらい強く張っていて、ドラム単独での演奏を聞いていても明らかに耳慣れたバスドラの低音が聞こえてこなかったんです。(踏ませてもらったんですが、跳ね返りが強くて未熟な自分はもちろんちゃんと鳴らす事は出来ません)ズッシリとした低音成分が感じられずに軽いビートに聞こえていた当時の自分は、思わず何をどう考えてそのようなチューニングにしてあるのかを聞かずにはいられませんでした。答えはこうでした。

「◯◯◯のベースは低音が強いから、混ざるとちょうどいいんだよ」

目からうろこでした。ベースとドラムで一緒に演奏している時には、確かに単音では聞こえていなかったバスドラの低音が聞こえてきたのでした。(リズム体がバッチリ重なった演奏をしてくれないとそうはならないんですけどね..)そのドラマーの方は、別のベーシストと演奏する時はまた違うチューニングにしています。

ライブな場所では実感しにくいですが、レコーディングブースや割とデッドに作られているリハーサルスタジオでは如実に解るので実験してみてはどうでしょう。

チューニングに関して。

基本的には「好きな音が良い音」という感覚が最も反影されているパートだという意見があります。チューニングに携わるポジションになった場合、ミュージシャンの好みを理解する事のみならず、全体の音作り、又エンジニアの意向を加味する事を理解しておく必要があると思います。以前と違い近年の音作りの傾向として「ミュートは最小限」とされる事が増えて来た様に思われます。もちろんチューニングの一つの手法としてミュートは効果的ではありますが、なるべく本来の鳴りを殺さない様なチューニングを求められる場合も考えられます。ただ PA もしくはレコーディングのエンジニア的に「不必要な倍音」が出ている場合、ミュートを多用せず倍音を少なくする方法の一つに、バスドラムの場合 YAMAHA 製のウエイト(取っ手の付いた布製の物)をバスドラムのタムホルダーに上から掛ける様に乗せると若干倍音が減り、音がタイトになる傾向にあります。もちろん固体差はありますが、試してみる価値はあると思います。又不必要な倍音を出す物の一つにフロアータムがあると思います。よく見かける光景としてガムテープ等をボトムのヘッドに貼るのを見かけますが、ミュート以外で倍音を消す手段としてバスタオルくらいの大きさの布をフロアータムの下に置くだけで倍音が少なくなる例があります。機会があれば是非試してみて下さい。

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